※ この記事は、現役で訪問看護の現場に立ち、スタッフの採用・教育にも携わる立場から書いています(→ 運営者情報)。
「訪問看護はきつい」「やめとけ」——ネットにはそんな情報があふれています。実際、大変な面は確かにあります。でも、それでもこの仕事を選び、長く続けている人がたくさんいるのは、それを上回る「魅力」があるからです。
この記事では、「患者さんに感謝されて嬉しい」といった当たり障りのない話ではなく、採用・教育する側として「人がどこに喜びを見出して続けているのか」を見てきた立場から、訪問看護のやりがいと魅力を本音でお伝えします。美談で逃げずに、なぜ「合う人には深く刺さる仕事」なのかを言語化していきます。
季節を、人生の時間を、一緒に味わえる
まず、私自身が「この仕事が好きだな」と心から思う瞬間から。
リハビリも兼ねて患者さんと散歩をするとき、季節の花が咲いていたり、鳥や虫がいたりするのが、本当に気持ちいい。病棟の中ではまず味わえない時間です。在宅は患者さんの「暮らし」のなかにお邪魔する仕事なので、その人の生活と地続きの景色を、一緒に眺めることができます。
そして、忘れられないのが患者さんの言葉です。「桜が咲くころまで生きていたい」「年を越せるまで生きていたい」——そういう願いをそばで聞き、実際にその景色を一緒に見られたとき、この仕事の尊さを噛みしめます。人生のラストの時間に、暮らしの場で寄り添える。これは在宅ならではの、何物にも代えがたいやりがいです。
(訪問看護の1日の流れそのものは、訪問看護師の1日のスケジュールで紹介しています。)
「自分のペース」と収入、両方を取りにいける
働き方・生活面の魅力も、訪問看護の大きな強みです。過酷な夜勤がなく、自分のペースで一日を組み立てやすい。そして正直に言うと、私自身、病院のころより収入はむしろ増えました。やりがいもあって収入も増えた——これはなかなか言うことなしの状態です。
ワークライフバランスの「幅の広さ」も特徴です。仕事をとことんやり込みたい人にも、程よく働きたい人にも、どちらにも居場所がある。自分の生活に合わせて働き方を選べるのは、長く続けるうえで本当に大きい。子育てとの両立も含めて、このあたりは訪問看護はワークライフバランスがいい?で詳しく書いています。
「自分でなきゃいけない理由」が持てる——個性が活きる
これは意外と語られない魅力です。病院では、多くの人が同じような働き方・同じような役割を担います。そのなかにいると、「自分の個性って何だろう」「自分でなきゃいけない理由ってあるのかな」と、ふと落ち込んでしまうことがあります。
訪問看護は、基本的に一人で患者さんと向き合う仕事です。だからこそ、あなたの関わり方、あなたの判断、あなたの人柄が、そのまま価値になります。「あなたが来てくれてよかった」と言ってもらえる。組織の歯車ではなく、一人の看護師として立てる——この感覚に救われる人は、とても多いです。
採用する側の視点:人が「やりがい」を感じて続く4つの条件
ここからは、採用・教育する側として、人の定着とモチベーションをどう見ているかをお話しします。私はいつも、経営心理学的な視点で、人が働き続けるには次の4つが満たされている必要があると考えています。逆に、これが欠けると離職やモチベーション低下につながります。
- ① 生理的な欲求:生きていくのに必要なお金が得られているか。そして、命に危険が及ぶような働き方をさせられていないか
- ② 帰属の欲求:人間関係が良いか悪いか。安心して所属できる場所か
- ③ 成長の欲求:この職場にいて成長できるか、得られるものがあるか
- ④ 貢献の欲求(公欲):誰かのためになっている、社会に貢献できているという実感があるか
この4つで訪問看護を見ると、なぜ「合う人に深く刺さるのか」がよく分かります。
①②④は、訪問看護では比較的満たしやすい。
- ① 国も在宅医療を推進しているため報酬は比較的高めで、過酷な夜勤もない
- ② たとえ人間関係に多少のストレスがあっても、訪問に出てしまえばほぼ一人の時間。職場の人間関係に消耗しにくい構造になっている
- ④ 日本の社会保障制度を維持するうえでも在宅推進は止まらない。世のため人のためになっている実感は、かなり持ちやすい
一方で、③の「成長」はミスマッチが起きやすいポイントです。超急性期が好き、手術が好き——そういう刺激や専門性に成長実感を覚えるタイプの人には、訪問看護は刺さりにくい。割合としては少数ですが、ここがズレると「思っていたのと違った」となりがちです。
つまり、訪問看護は合う人には本当に深く刺さるけれど、合わない人もはっきりいる仕事です。「もう病院には戻れない」と感じる人——それが、まさに訪問看護がハマる人です。自分がどちらのタイプかは、訪問看護に向いてる人・向いてない人もあわせて読むと見えてきます。
キャリアの選択肢が広がるという魅力
もう一つ触れておきたいのが、キャリア面の広がりです。訪問看護は、一人で考えて動く力(自走力)や、制度・社会資源を読み解く力など、病院とは違うスキルが身につきます。そして、そこから先のキャリアの道筋も、思っている以上に多様です。
このあたりは深い話になるので、訪問看護師のキャリアパスで、年収の上げ方・管理者への道まで詳しくまとめています。「やりがい」と「キャリア・収入」を両立させたい人は、ぜひあわせて読んでみてください。
まとめ:「合う人には深く刺さる」仕事
訪問看護の魅力を、本音で整理するとこうなります。
- 暮らしの場で、季節や人生の時間を患者さんと一緒に味わえる
- 夜勤なしで自分のペースを保ちつつ、収入もしっかり狙える
- 組織の歯車ではなく、自分の個性・判断がそのまま価値になる
- 定着の4条件(お金・人間関係・成長・貢献)のうち、①②④を満たしやすい構造
- 逆に③の刺激・専門性を求めるタイプにはミスマッチも起きる
大変さがあるのは事実です。それも正直に知ったうえで選んでほしいので、訪問看護は「やめとけ」って本当?きつい理由とリアルな実態もあわせて読んでみてください。きつさと魅力、その両方を天秤にかけたうえで、それでも惹かれるなら——あなたは訪問看護に「合う人」かもしれません。

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