※ この記事は、現役で訪問看護の現場に立ち、精神科訪問看護にも携わる立場から書いています(→ 運営者情報)。
「精神科訪問看護って、1日どんなふうに動くの?」——身体の訪問看護とは、時間割こそ似ていても、中身はまるで違います。会話・観察・服薬確認が中心の、精神科訪問ならではの1日を、経験のある立場から具体的にお伝えします。(仕事の全体像は精神科訪問看護とは?を先に読むと分かりやすいです。)
精神科訪問看護の1日の流れ(一例)
事業所によって差はありますが、標準的な1日のイメージはこんな感じです。
- 朝:出勤・申し送り。前日や夜間に変化のあった方の共有、本日の予定と持ち物の確認、情報収集
- 午前:訪問(2〜3件)
- 昼:休憩
- 午後:訪問(2〜3件)
- 夕方:帰所して記録、関係機関への連絡・連携、退勤
精神科は24時間対応やオンコールが少ない傾向があるため、生活リズムは比較的安定しています。土日祝が休みのステーションも多いです。身体の訪問看護の1日と比べたい方は訪問看護師の1日のスケジュールもあわせてどうぞ。
1件あたりの時間・件数と「算定」の特徴
1件あたりの訪問は、通常30分以上90分未満で算定します。ここで身体科と違うのが、30分未満の「短時間訪問」も算定できること。拒否が強い方や、長時間の接触が難しい方に、無理のない形で関われます。
また、精神科訪問看護は独立した算定になっており、通常の訪問看護より基本療養費の単価が高いのも特徴です。1日の件数は5〜8件程度。マックスまで回っても8件くらいでかなりきつくなります。同一建物内で複数名を診る場合は、最大15〜16名になることもあります。このあたりの給料・報酬の仕組みは精神科訪問看護の給料・求人事情で詳しく書いています。
訪問1件で何をする?——会話・観察・服薬確認
訪問1件の中身は、身体のケアではなく「関わり」が中心です。主にこんなことを確認・支援します。
- 傾聴:会話から情報を収集する
- 内服確認:飲み忘れはないか、服薬カレンダーがうまく使えているか
- 日常生活行動:陰性症状や陽性症状で自分の世話ができなくなることがあるので、生活が回っているか確認
- 睡眠状況の確認
- ストレスの有無、気分転換ができているか
- 通所状況:通所している方は、通所先での困りごとがないか確認
確認して、必要があれば改善策を提案したり、一緒に相談したりします。状態が悪いと分かったら、早めに主治医へ情報提供。受診が必要な場合は早めに調整し、場合によっては受診に同行します。人手が足りなければ、関係機関の援助者にも応援を要請します。
記録と多職種連携——「統一対応」が肝
記録では、病的体験の有無(あればその内容を詳細に)、そして内服状況を必ず記載します。
精神科訪問で特に大切なのが、関係機関との「統一対応」です。状態の変化は、看護だけでなく関係機関の援助者にも周知して、みんなで対応をそろえてもらいます。たとえば——
- 受診拒否があった場合:支援者全員で「受診の必要性を伝える」ことを、統一対応として決める
- 一時的にADLが低下した場合:看護でケア対応するか、ケアマネジャーへ介護用品などの手配を依頼する
- 通所・就労支援・デイケア参加の調整:地域の精神保健福祉士や、かかりつけ病院の精神保健福祉士に依頼する
看護師が一人で抱えるのではなく、支援者みんなで足並みをそろえる。ここが、精神科訪問の質を大きく左右します。
身体の訪問と一番違うところ——「見えない症状を、会話から察する」
身体の訪問看護と一番違うのは、症状が”目に見えない・数字に表れない”という点です。バイタルの数値のように分かりやすい指標が少ないので、会話や言動から状態を察していく必要があります。ここに、精神科訪問ならではの難しさと奥深さがあります。
そしてもう一つ、内服が命綱だということ。内服拒否があると症状が劇的に悪化するので、内服状況の確認と、「どうすれば飲んでもらえるか」を考えて対策していくことが、日々の関わりの中心になります。この難しさとやりがいについては精神科訪問看護はきつい?でも掘り下げています。
まとめ
- 1日は「申し送り→午前訪問→昼→午後訪問→記録・連携→退勤」。件数は5〜8件
- 1件30〜90分。30分未満の短時間算定もあり、独立算定で単価は高め
- 訪問の中心は傾聴・内服確認・生活/睡眠/ストレスの観察
- 記録は病的体験と内服状況。関係機関との「統一対応」が肝
- 一番の違いは「見えない症状を会話から察する」こと。内服が命綱
精神科訪問看護の1日は、派手な医療処置こそありませんが、その分「人と向き合う」密度が濃い仕事です。会話や関係づくりに喜びを感じる人にとって、毎日が学びと発見の連続になるはずです。

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