※ この記事は、現役で訪問看護の現場に立ち、スタッフの採用・教育やオンコール体制づくりにも携わる立場から書いています(→ 運営者情報)。
「訪問看護に興味はあるけど、オンコールが不安で踏み出せない」——そう感じている方はとても多いです。実際、訪問看護を辞める理由としても、職場選びで一番悩むポイントとしても、オンコールは常に上位に来ます。
先に結論を言うと、オンコールは「正体」を知ってしまえば、思っているほど怖いものではありません。怖いのは、夜中に何が起きて・何を判断させられるのかが見えないからです。この記事では、オンコール体制を実際に組んでいる立場から、仕組み・手当の相場・かかってくる電話の中身・出動の頻度、そして「負担の軽い職場の見分け方」まで、包み隠さず書いていきます。
オンコールの仕組み・回り方・手当の相場
オンコールとは、日勤の時間外(夜間・休日)に、利用者さんやご家族・施設からの緊急連絡を受ける待機当番のことです。担当の回り方は事業所によってさまざまですが、スタッフ数で頭割りするのが一般的で、人数が少ない事業所ほど一人あたりの当番回数は増えます。
手当は「待機しているだけで発生する手当」と「実際に出動したら別途つく手当」の二段構成になっていることが多いです。相場は幅がありますが、待機1回あたり数千円、出動すると別途上乗せ、というイメージです。ここは求人票で必ず確認したいポイントで、後述するように「待機の手当はいくらか」だけでなく「出動の実績はどれくらいか」までセットで見ないと、本当の負担は分かりません。
夜間にかかってくる電話、実際どんな内容?
一番イメージしづらいのが「何の電話がかかってくるのか」だと思います。実際に夜間に受ける問い合わせを、緊急度のイメージごとに整理してみます。
① 発熱・症状・バイタル異常の相談(多くは電話で対応できる)
- 発熱した。頓用の解熱剤を飲ませてもいいか
- 血圧が普段より高い/低いが、どうしたらいいか
- 腹痛を訴えている/嘔吐している
- 血尿が出ている/血便のようなものが出ている
- 眠前や朝の血糖値が低い
- 寝ずにずっと叫んでいる/眠れないと言っている
② 医療処置・デバイスのトラブル(出動になりやすい)
- 点滴の針を抜いてしまった/輸液ポンプのアラームが鳴っている
- 膀胱留置カテーテルを抜いてしまった
- 薬を間違えて飲ませてしまった
③ 緊急性が高い・救急対応が必要なもの(出動 or 即救急要請)
- 酸素飽和度(SpO2)が下がってきた
- 意識がないようだ/呼吸の様子がおかしい/呼吸が止まっているようだ
- 痙攣している
- (高齢者施設から)転倒してこういう状態だが、どうしたらいいか
- すでに救急車を呼んだ、という連絡
ちなみに「明日は何時に来ますか?」といった、純粋な問い合わせも普通にかかってきます。内容は本当に幅広いですが、こうして並べてみると「日中、看護師がやっていることと種類は同じ」だと気づくはずです。
電話だけで終わる?それとも出動?
すべての電話で家に駆けつけるわけではありません。電話でしっかり状況を聴取して、様子を見て大丈夫そうなものは「変化があったら、また連絡してください」とお返事して終了することも多くあります。
一方で、出動の判断になりやすいのはこんなケースです。
- カテーテル類の事故・自己抜去:緊急性が高いものが多いので訪問し、看護師で入れ直せるものは新しい管に入れ替える
- 発熱・酸素低下・意識レベル低下など、医療の介入が必須そうな案件:出動しつつ、主治医へ指示を確認したり、往診に入ってもらう調整をする
- 命に関わる緊急案件:訪問してから救急車を呼ぶこともあれば、電話の時点で救急搬送をお願いすることもある
体感としては、電話2〜3件に対して1件くらいが実際の出動、というイメージです。もちろん事業所の規模や特化している科目によって変わりますが、ひとつの目安にしてください。「電話=必ず出動」ではない、というのは知っておくと安心材料になると思います。
正直、オンコールで一番しんどいのは何か
まず、よく不安に挙がる「いつ鳴るか分からないプレッシャー」は、回数をこなせば1〜2か月でだいぶ慣れます。これはあまり心配しなくて大丈夫です。
本当にしんどいのは、別のところにあります。
- 朝方に電話が連発するとき:施設では6時ごろが起床・朝の訪室の時間帯で、ここで転倒の発見やバイタル異常、症状の発見が重なりやすい。複数の施設から同時にかかってきて眠れず、「出勤まであと1時間眠れそうだったのに……」とつらくなる
- 夜間対応とお看取りが重なるとき:さんざん対応した後に、眠いままエンゼルケアやご家族対応をして、翌日の勤務に間に合うか緊張する
- 医師の指示が必要なのに連絡がつかないとき:時間との勝負なのに解決の糸口が見えず、ご家族の視線も気まずい。これはかなり消耗します
ただ、ここは強調しておきたいのですが——やること自体は「日中の動きが夜になっただけ」です。基本的に「自分一人では判断できないかも」という性質のものではありません。日中の業務をきちんと自立してこなせていれば、夜だからできない、ということはまず起こりません。
逆に言えば、危ないのは「人手が足りず、日中の業務もまだ自立していないのにオンコールをやらされる」状況です。そういう職場かどうかを見抜くのが、後述する職場選びのポイントになります。
一人で抱えなくていい——バックアップ体制の違い
夜中に一人で判断する不安をどこまで減らせるかは、職場のバックアップ体制で大きく変わります。代表的なのが次の2つです。
- 法人・グループ内に医療機関があり、夜間も待機医がいる体制:指示がほしいときにすぐもらえるので、とてもやりやすい。「これはもう看護だけでは無理」というときも、先生の往診をお願いすればいい。アセスメントに自信が持てないときも、先生に相談すれば、いったん責任を委ねられる——この安心感は大きいです
- ファースト・セカンドの二段構え:まずファーストの看護師が対応し、何かあって電話に出られないときはセカンドに転送される体制。手当の例でいうと、ファースト2,000円・セカンド500円のような配分で、二人配置になる分、一回あたりの手当は下がるのがデメリット。とはいえ、実際にセカンドまで回ることはほとんどありません
もちろん、一人でオンコールを回している事業所もあります。どちらが良い・悪いではありませんが、「困ったときに誰に・どう繋げられるのか」は、入る前に必ず確認しておきたいところです。
「ゆるいオンコール」を求人で見抜く方法
ここが一番大事です。求人票でよく見るのが、「日中に夜呼ばれないような対応をしているので、夜間に呼ばれることはほとんどありません」という書き方。気持ちは分かるのですが、はっきり言って日中の対応と夜間に起きることの相関は、ほとんどありません。急性増悪・急変・トラブルは、日中どんなに丁寧に対応していても防げないものばかりだからです。
だから、雰囲気の言葉に流されず、面接・見学では夜間出動の「実績」を直接聞くのが確実です。具体的にはこう聞きます。
- 1回の当番で、夜間の電話はだいたい何件くらいですか?
- そのうち、実際に出動するのは何件くらいですか?
- 往診につなげる必要があった案件は、どれくらいの頻度でありますか?
さらに踏み込むなら、「そういった夜間の実績をちゃんと集計していますか?」と聞いてみてください。集計していない場合は、「では、夜間の働きをどのように評価してもらえるのですか?」まで確認したい。ここが整備されていない職場だと、どんなに「大変です」と訴えても、うまくあしらわれて聞いてもらえない——ということが起こりがちです。実績を数字で把握し、それを評価に反映する姿勢があるかどうかは、その事業所がスタッフをどう扱うかの分かれ目になります。
このあたりの「いい職場・危ない職場の見抜き方」は、オンコールに限らずステーション選び全体に通じる話なので、あわせて訪問看護ステーションの選び方も読んでみてください。
オンコールを避ける・減らして働く道
「オンコールはどうしても無理」という選択も、もちろんアリです。非常勤、オンコール免除、日中のみの勤務、土日祝休みの拠点など、避ける・減らす道はいくつもあります。
特に子育て中の方には、正直なところを伝えておきたいです。未就園児・未就学児を育てている時期は、夜間の着信音で子どもを起こしてしまったり、子どもの声で電話対応がままならなかったりします。一人で寝られる・着信があったら一人になれるスペースに移動できる、という環境が整うなら比較的ストレスは少ないですが、子どもをお風呂に入れている最中や寝かしつけの場面での着信は、かなりこたえます。子どもをいったん後回しにして対応せざるを得ず、「当たってしまった」「そっちのけにしてしまった」と自分を責めて、それがまた強いストレスになります。
なので、経済的に余裕があるなら、その時期は無理にオンコールをやらない選択も十分に賢明だと思います。逆に、本当に「寝当直」レベルで落ち着いている事業所なら、お小遣い稼ぎ程度に引き受けるのもアリ。ただし、それは面接時に確実に確認してください。
もう一つ、ぜひ聞いておきたいのが——「実際にやってみて夜間がきつかったら、オンコールを外す選択をしてもいいですか?」という確約を取れるかです。ここで微妙な反応をされる職場は、入ってから居づらくなる可能性が高い。おそらく人員に余裕がなく、早く戦力として使いたいだけです。そういうサインを感じたら、無理せず次の職場を見にいきましょう。
子育てとの両立全般については、訪問看護はワークライフバランスがいい?子育てとの両立のリアルでも詳しく書いています。
まとめ:オンコールは「正体」を知れば選べる
オンコールは、訪問看護で最も不安視されるところですが、整理するとこうなります。
- かかってくる電話の種類は、日中の看護と本質的に同じ。出動は電話2〜3件に1件くらいが目安
- 「鳴るかも」のプレッシャーは1〜2か月で慣れる。しんどいのは朝方の連発・お看取りの重なり・医師に繋がらないとき
- 日中の業務を自立してこなせていれば、「夜だから判断できない」はまず起きない
- 待機医やファースト・セカンド体制など、バックアップの手厚さで安心感は大きく変わる
- 求人票の「夜は呼ばれません」は鵜呑みにしない。夜間出動の実績を数字で聞き、集計・評価しているかを確認する
- 避ける・減らす道もある。子育て期は無理をしない選択も賢明。「きつければ外せるか」の確約を取れるかで職場の本性が見える
オンコールがあるから訪問看護は無理、と決める前に、まずは「どんな体制で・どれくらいの負担なのか」を具体的に確認してみてください。職場によって、ここは天と地ほど変わります。あなたに合った働き方は、必ず見つけられます。
「そもそも訪問看護って自分に合っているのかな」と迷っている方は、訪問看護は「やめとけ」って本当?きつい理由とリアルな実態もあわせてどうぞ。

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