【両方経験した現役管理者が本音】病棟看護師 vs 訪問看護|働き方・きつさ・給料の違いを正直に比較

※ この記事は、病棟と訪問看護の両方を経験し、現在は訪問看護の現場に立ちながら複数拠点の運営・採用・教育にも携わる立場から書いています(→ 運営者情報)。

「病棟がしんどい。訪問看護に移ろうかな……でも後悔しないだろうか」

そんな迷いを抱えている方は多いと思います。私自身、病棟を経て訪問看護の世界に移り、今は看護師を採用し、育て、管理する側にもいます。だからこそ、きれいごと抜きで「病棟と訪問は何がどう違うのか」を比較してみます。良い面だけでなく、しんどい面、そして向き・不向きまで正直にお話しします。

1. 働き方・1日の流れが「根本から」違う

まず一番大きいのは、夜勤の有無による生活リズムの違いです。

病棟は夜勤・シフト制で、複数の患者さんを受け持ち、チームで動きます。一方、訪問看護は基本的に直行直帰で、1日5〜6件をひとりで回り、自分のペースで進めていきます。

正直に言うと、私が病棟を離れた一番の理由もここでした。苦手な上司や先輩と顔を合わせながら、夜間も気を張って働き続ける——その人間関係の負荷と、重症の患者さんを抱える緊張感。さらに、同時多発的に発生するタスクを、まだ経験の浅い中でさばき続けなければならない状況に、私は持ちこたえられませんでした。

訪問看護に来てよかったと感じる人が口を揃えるのが、この「同時多発タスクからの解放」です。訪問では、患者さんごとに対応する時間がしっかり確保された状態で仕事を進められます。もちろん、事業所の方針・患者数・重症度・人員配置によっては、緊急対応が重なってしんどい日もあります。それでも、急性期病棟と比べれば頻度はずっと少ないはずです。「夜勤がないだけで全然違う」と話すスタッフは本当に多いですし、ステーションによってはシフト制ではなく土日祝休みのところもあり、働きやすさを感じる人は多いでしょう。

訪問看護の1日の流れは 訪問看護師の1日のスケジュール で詳しく紹介しています。

2. “きつさの種類”がまるで違う

「病棟と訪問、どっちがきついか」とよく聞かれますが、私はきつさの”種類”が違うと答えています。

病棟のきつさは、仕事をスピーディに、かつ大量にこなさなければならないところです。タスクをほかの職種に振り分ける文化がまだ根づいていなかったり、システム的に難しかったり、「看護師がなんでもやる」という構造が残っている職場も少なくありません。

訪問のきつさは、患者さんの人生に深く入り込んでいくところにあります。病院が軽いという意味ではありませんが、訪問では人生の重要な決断に関わる場面が多く、ご家族が抱える苦痛も目の当たりにします。「どこまで対応するのか、できるのか」という判断は重く、「自分のアドバイス一つで患者さんの人生を変えてしまうかもしれない」と思い詰めてしまう人もいます。加えて、在宅は医療資源が十分でなかったり、清潔・不潔の区別が難しかったりします。人手が少なければダブルチェックも手薄になりますから、医療ミスや、麻薬・向精神薬の取り扱いに強い緊張を感じる人もいます。

そして、「楽になると思っていたら別のしんどさがあった」というギャップ。これは多くの場合、天候と環境です。のんびりできると思っていたら、意外と体力を使います。患者さん宅は暑い・寒い・汚い・においがあることもありますし、ときには怒鳴られて身の危険を感じることもあります。それがきっかけで辞めていく人も少なくありません。さらに、訪問したら利用者さんがすでに息を引き取られていた、という場面に立ち会うことも稀にあります。訪問看護には、それ相応の精神力と体力が求められると思っておいたほうがいいでしょう。

訪問看護のしんどさは 訪問看護は「きつい・やめとけ」は本当か でさらに掘り下げています。

3. 給料はどう変わる?(上がる人・下がる人)

「病棟から訪問で給料は上がるの?下がるの?」——これも気になるところですよね。

夜勤手当の分まで込みで、そのまま給料をスライドできる人は多い印象です。ただ、残業代がなくなったことで「下がった」と感じる人は案外多いのも事実です。また、かつて病院で高給を得ていた世代の方からすると、近年の賃金水準そのものが低く感じられ、「病院に残っていたほうがマシだったかも」と思う人もいます。

一方で、上を目指せば病院よりはるかに良い給料が狙えるのも訪問の特徴です。一般のスタッフでも、頑張り次第で年収1,000万円を超えた人を私は知っています。ポジションの面でも、病院では看護師何十人・何百人に対して看護部長は一人、という構造でなかなか席が空きません。ところが在宅では、5〜7人規模でも所属長のポジションが狙えます。キャリアアップやマネジメントに挑戦したい人にとっては、チャンスの多い業界だと言えます。

給料の内訳や相場は 訪問看護師の給料はいくら? で具体的に解説しています。

4. 求められるものが違う——自律性・判断・スキル

病棟では、先輩や医師がすぐそばにいます。けれど訪問は、ひとりで判断する場面が圧倒的に多い。ここで戸惑う病棟経験者は多いです。

患者さんごとに主治医が異なることも多く、「看護師としてどこまで判断していいのか」「医師の指示なしにできる範囲はどこまでか」が分からない、という声もよく聞きます。さらに、侵襲の高い処置やリスクのある技術を、在宅では看護師が担うこともあります。たとえば点滴のための留置針挿入、男性の膀胱留置カテーテル交換、胃管の交換など。研修医のトレーニングを兼ねて、大学病院や大きな総合病院では医師が行っている処置もあり、経験が長い看護師でも「やったことがない」技術があるため、「ここまで看護師がやるの?」と驚く人もいます。

逆に、病棟経験が訪問でしっかり活きることもあります。

  • 清潔操作や処置器具の知識・使い方:器具に触れる機会は病院のほうが多く、手術用器具の名前・種類・用途は、介助についた経験がそのまま強みになります。
  • ドレーン類の管理:近年は重症の方がドレーンを入れたまま在宅へ戻るケースも増えており、その管理の知見は貴重です。
  • 教育で培った”型”:病院は歴史が長いぶん、教育の方法やシステムが洗練されています。長年ブラッシュアップされ、本質を突いた教育を受けてきた経験は、在宅でも生きます。

未経験で飛び込む場合に必要な技術は 未経験から訪問看護に挑戦する でまとめています。

5. 人間関係の違い——「楽になる」とは限らない

ここは、はっきり合う・合わないが分かれるところです。

先輩や上司、同僚がいる環境で相談しながら働きたい人もいますし、「患者さんとそこまで深く関わりたいわけではない、ルーティン化した業務をこなして生活できればいい」という人もいます。逆に、訪問はひとりで気楽な反面、「患者さんの話が長い」「お願いを断れず、なかなか切り上げられない」といった困りごともあります。結局は、自分がどう働きたいか次第です。

ひとつ、誤解されがちなことをお伝えします。「病棟の人間関係に疲れたから、訪問なら楽になる」とは限りません。接する人数そのものは、実はあまり変わらないからです。職場で関わる人数は減りますが、訪問で関わる患者さん・ご家族は増えます。病院は職場の人数こそ多いものの、患者さんは入院中ほぼ同じ顔ぶれで、ご家族も四六時中いるわけではありません。だとすれば、関わる総量は大きくは変わらず、違いは「その相手と利害関係にあるかどうか」あたりに出てくるのだと思います。

私自身は訪問に来て本当に楽になったと感じています。ただ、人によっては患者さん・ご家族とのやり取りのほうがつらい、という場合もあるでしょう。クレームを多く受ける人はきついと感じるかもしれません。礼儀・身だしなみ・言葉遣いが理由で、患者さんやご家族から「この人はちょっと……」と敬遠されてしまう人もいます。

ここは病院との大きな違いかもしれません。病院ではナース服にマスク、髪を束ねて——いわば「個人」の存在を薄くできます。裏を返せば、自分の苦手な部分やクセを隠しやすい。けれど訪問では、その人の”個”がそのまま出ます。

6. 採用・管理する側の本音——病棟から来る人をこう見ている

採用する立場として、病棟から来る方で一番気にするのは、言葉遣いや礼節、接遇です。

高齢の患者さんに対して「いたいー?」「ちょっと待ってねー」とタメ口で接してしまう看護師は、正直少なくありません。在宅では、ここがそのまま信頼に直結します。だからこそ、最初に必ず見るポイントです。

技術や知識については、これまで経験してきた「科」から、どんな技術を持っていそうか、業務負荷に耐えられそうか、急変対応はできそうかを予測します。脳外科・循環器・呼吸器など、重症かつ急変リスクの高い患者さんを管理してきた看護師は、比較的業務負荷に耐えられると見ます。よほどネガティブな面がない限り、積極的に採用したいと感じる人材です。

「伸びる人・苦労する人」の肌感もお伝えします。病院で稼ぎたかったけれど稼げなかった、外に出てみたら意外と給料が上がると知らなかった——そういう人は、在宅で非常に活躍している印象があります。逆に、「割に合わないな」と感じてしまった人ほど成長が止まりがちで、訪問件数をなるべく少なく調整しようと躍起になります。そうなると、結果的に本人が苦しくなってしまいます。

採用側が面接で何を見ているかは 訪問看護の面接でよく聞かれる質問と受かる答え方、職場選びの基準は 失敗しない訪問看護ステーションの選び方 をどうぞ。

7. 訪問→病棟に戻れる?後悔しないための「向き・不向き」

最後に、いちばん知りたいであろう「戻れるのか」「後悔しないか」について。

まず、訪問から病棟に戻る人は少ないです。私の経験上、1割もいないと思います。

戻る人の典型は二つ。ひとつは手術が好きな看護師で、手術室に戻るために病院へ帰っていきます(これは医師も同じです)。もうひとつは運転ができない人。違反や事故を早い段階で繰り返し、病院に戻るケースがあります。ただ、どちらも少数派です。

そのうえで、正直に「向き・不向き」をお話しします。

病棟に残ったほうがいいかもしれない人

  • 接遇が苦手な人・自信がない人:訪問はNGを出されてしまえば仕事になりません。患者さんからステーションごと断られれば、経営側にとっても大きな痛手です。本人にとっても苦しい結果になりがちです。
  • どうしても運転が不安な人:自転車で訪問しているステーションを選ぶ、ドライバー付きのステーションやクリニックを選ぶ、という道もあります。それでも、病院に戻るというより「自分に合った訪問を探す」方向に進む人が多い印象です。
  • 動物アレルギーや、ゴキブリ・ネズミがどうしても無理な人:犬や猫を飼っているお宅も多く、衛生環境もさまざまです。ここは正直、避けておいたほうがいいと思います。

逆に言えば、これらに当てはまらず、自分のペースで一人ひとりと向き合いたい人、マネジメントや収入アップに挑戦したい人にとって、訪問看護は十分に「来てよかった」と思える選択になり得ます。

まとめ:迷っているなら、まず”自分の軸”を決める

病棟と訪問は、優劣ではなく「きつさの種類」「働き方」「求められるもの」が違うだけです。夜勤のリズムから解放されたいのか、人生に踏み込む重さを引き受けられるのか、ひとりで判断する自律性を楽しめるのか——自分の軸が決まれば、答えは見えてきます。

もう少し具体的に考えたくなったら、こちらもどうぞ。

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