【現役管理者が本音】訪問看護師のバッグの中身・選び方|現場の正解はまさかの「工具バッグ」だった

訪問看護の仕事・働き方

※ この記事は、現役で訪問看護の現場に立ち、スタッフの採用・教育や事業所の運営にも携わる立場から書いています(→ 運営者情報)。

※本記事にはアフィリエイト広告(商品プロモーション)が含まれています。

訪問看護デビューにあたって「専用の訪問看護バッグを買おうかな」と考えているあなたへ。先にお伝えすると、通販の「訪問看護バッグ」を使っている人を、現場でほぼ見たことがありません。高いし、デザインも正直微妙。じゃあ現場の人間は何を使っているのか——うちの答えは、ちょっと意外なところにあります。

結論:私のバッグは「工具用のツールバッグ」です

私が使っているのは、職人さんが使う工具入れ(ツールバッグ)のようなバッグです。理由はシンプルで、訪問看護の道具の持ち運びに必要な条件を、専用品よりよほど満たしているから。

  • 開けた瞬間、どこに何があるか見える。訪問先でゴソゴソ探さなくていい
  • 頑丈。毎日持ち歩いてぶつけても平気
  • 内外にポケットが複数あって仕分けしやすい
  • 入り口が大きく開いて、形状をある程度維持できる。針捨て用のボックスなども安定して入れられます
  • 作業台としても使える。頑丈で形が崩れないので、物を置く場所がないお宅では上がちょっとした作業スペースになります

もちろんリュック派のスタッフもいます(後述しますが、自転車移動ならほぼリュック一択です)。要は「専用品かどうか」ではなく、ガバッと開く・中が見える・形が崩れない・頑丈という条件を満たすかどうか。ちなみに週次で海外・国内の看護グッズを定点観測していると、タブレットと記録書を同時に持てる機能的なボディバッグなども見かけますが、機能は良くても斜め掛けスタイルの人は現場にほぼいないので、私は却下しました。

参考までに、この条件を満たす工具バッグは楽天で5,000円台から見つかります。私が使っているものと同系統のタイプだと、たとえばこういうものです。

Drado 工具バッグ 大型・ベルト付き・撥水処理(楽天・5,000円台)
ガバッと開く・形状を維持できる・内外ポケット・撥水と、この記事で挙げた条件を一通り満たしている大型ツールバッグです。専用の「看護バッグ」より安く済むことが多いのも、工具バッグを選ぶ利点です。

バッグの中身、全部見せます

「訪問看護師のバッグには何が入ってるの?」——私のバッグの中身を全部出すと、こうなります。

測定・アセスメント系

  • 血圧計/体温計(非接触タイプも)/パルスオキシメーター/聴診器/ペンライト
  • 定規・メジャー(創部や褥瘡の測定用)

処置・衛生系

  • 処置用の手袋/処置用シーツ/消毒液/アルコール綿/ガーゼ/絆創膏/フィルム剤/テープ類/綿棒
  • 替えのマスク/ハンドソープ/タオル/平おむつ数枚
  • ハサミ/ジップロック各種(サイズ・種類いろいろ)/ビニール袋多数(ごみ捨てにも、シューズカバー代わりにも)
  • 空のペットボトル——陰部洗浄や創部の洗浄が必要になったときの洗浄ボトルとして。基本はご自宅で用意していただくものですが、何もないお宅もあるので緊急用に忍ばせています。100均のドレッシング容器などでも代用でき、清潔用・不潔用で分けて使います

記録・文具系

  • メモ帳/ボールペン/マジックペン
  • 内服カレンダー

その他

  • 替えの靴下(靴の記事で書いた通り、訪問先で靴下が汚れることは普通にあります)

これがベースで、クリニック併設型の訪問看護では医材や薬剤がさらにプラスされます。逆に精神科訪問看護は処置が少ないぶん、比較的荷物は少なくてすみます。

支給されるもの・自分で買うものの境界線

「これ全部自腹?」と心配になったかもしれませんが、大丈夫。業務で使う物品は、ほとんど経費で調達できます。自分で用意することになりやすいのは、こんなあたりです。

  • 暑さ対策・日よけ・防寒の装備。ここは自前になることが多い
  • こだわりの文房具。好きなペンを使いたければ自分で
  • 聴診器は支給対象ですが、長年使ってきた愛用品をそのまま使う人が多いです

おしゃれなバッグで訪問してもいい?

「工具バッグが正解」と言われると、味気なさに気が引けるかもしれません。結論から言うと、おしゃれなバッグで訪問している人は普通にいます。訪問看護は服装も持ち物も自由度が高いので、ここは好みで選んで大丈夫です。

ただ、実際に現場で使われているものを見ていくと、ある共通点が浮かびます。

  • ザ・ノース・フェイス
  • パタゴニア
  • アークテリクス

——全部アウトドアブランドです。

これは偶然ではないと思っています。丈夫で、雨に強くて、容量があって、汚れても洗えて、多少ぶつけても平気。訪問看護のバッグに求められる条件と、アウトドアギアの条件がほとんど同じなんです。つまり現場で生き残っている「おしゃれ」は、おしゃれを取りにいった結果ではなく、機能を突き詰めた結果として格好いいもの。工具バッグと発想は変わりません。

これはやめておいたほうがいい、というライン

逆に、私が「それはやめておいたら」と思うのはヴィトンやグッチのような高級ブランドです。

ただ、理由はあなたが想像しているものとは少し違うかもしれません。「利用者さんに贅沢だと思われるから」ではないんです。困るのは、もっと個人的なところです。

  • 汚れる——訪問先は生活の場です。何が付くかわかりません
  • なくす——1日に何軒も回って、置いて、持って、また置いてを繰り返します
  • 傷つける——玄関、階段、自転車のカゴ、車の足元

そのたびに自分がへこむ。仕事道具として毎日連れ回すには、そのダメージが大きすぎるんです。「汚れても、傷ついても、まあいいかと思える価格帯」——これが実質的な上限だと思っています。靴のときも時計のときも、結局この線引きに落ち着きました。訪問看護という仕事の性質そのものから来る基準です。

バッグは大きめ?小さめ?

「訪問看護のバッグは小さめのほうがいいですか」とよく聞かれます。ここ、答えが少し意外かもしれません。

バッグの大きさは、自分では決められません。担当する患者さんが決めます。

具体的には医療依存度です。医療的な処置が多い方を担当すれば、その分だけ持っていく物が増えて、バッグは大きくなる。処置が少ない方が中心なら、小さくてすみます。荷物の量が先にあって、バッグの大きさは後から決まる——順番はこれです。

なので買うときの考え方はこうなります。ツールバッグくらいの大きさを「上限」だと思っておけば、どんな利用者さんを持つことになっても準備できます。足りなくて困ることはあっても、大きくて困ることはあまりありません。

「小さすぎる」の境界線はどこか

とはいえ、下限ははっきりしています。次の2つに当てはまったら小さすぎです。

  • 処置物品が入らない
  • 書類を丸めたり折ったりしないと入らない

特に2つ目は、店頭でバッグを見ているときに見落としがちなポイントです。訪問看護は書類を持ち歩く仕事で、しかもそれは折り目をつけたくない書類です。「A4が折らずに入るか」——これが実質的な最低ラインだと思ってください。

それでも小さくしたい理由は、ちゃんとある

「小さめ」を探している人の気持ちも、現場を見ているとよく分かります。大きいバッグには実害があるからです。

  • 狭い個人宅で取り回しがきかない——物にぶつかる、そこを通れない。これは本当によく見ます
  • 単純に体力的にきつい——毎日、何軒も持ち歩くものなので

体格の小さい方が大きなバッグを抱えて、狭い廊下で難儀している場面は珍しくありません。ここは笑い事ではなく、実務の効率にも安全にも関わります。

答えは「バッグを小さくする」ではない

ではどうするか。ここが大事なところです。

小さくするのはバッグではなく、家に持ち込む量のほうです。

車を使えるなら、メインバッグは車に置いたまま、その訪問で使うものだけを持って上がればいい。バイタルセットだけ持って玄関に入る、という日もあります。処置が必要になったら取りに戻ればいいだけです。

つまり大きいメイン+小さいサブの2段構えが、現実的な答えになります。「小さいバッグが欲しい」という悩みは、たいていこれで解けます。バッグ1つで全部やろうとするから、大きさで悩むことになるんです。

メインバッグだけじゃない:サブバッグという手

あまり語られませんが、バッグは1つとは限りません。私はエプロンバッグをサブとして使っています

メインのバッグは玄関に置いたまま、その訪問で使うものだけを身につけて動く——という使い方です。処置のたびに玄関まで取りに戻らなくていいので、動きが軽くなります。ハサミやペン、テープのように「常に手元にあってほしいもの」を入れておくと効きます。

ちなみにウエストバッグ(ヒップバッグ)を腰に巻いている人は、正直まだ見たことがありません。ただ、斜め掛けにして胸の前で使うなら、サブバッグとしては成立するかもしれないと思っています。訪問看護は人の家に上がる仕事なので、腰まわりに大きなものを着けていると、しゃがむ・上がる・座るの動作で引っかかるんです。身につけるものは、上半身のほうが相性がいい——これが今のところの実感です。

移動手段でバッグ選びは変わる

  • 自転車:ほぼリュック一択です。手提げレベルの量なら前かごに入れる人・事業所もあります
  • :選択肢が一気に広がります。トート派、リュック派、ショルダー掛けのボックスタイプ派、いろいろです

ここで安全面の注意をふたつ。重いバッグを自転車の前かごに載せるとバランスを崩しやすいですし、駐輪するときも積載物の重さで自転車ごと転倒することがあります。それと、個人宅は居住環境が狭いことも多く、大きな荷物が物にぶつかる・ひっかけて落とすのは慣れるまで本当に起きやすい。バッグは「運ぶ道具」であると同時に「訪問先で事故を起こしうる物体」でもある——この意識は新人のうちから持っておいて損はないです。

雨対策は「バッグの外」より「中」でやる

リュック用の防水カバーや、自転車のかごにかぶせる防水カバーはよくありますが、経験上、それでもダメなときはダメです。なのでうちの対策は中身側。

  • バッグの中身を、すべてビニール袋に入れてからバッグに入れる
  • 大切な書類や精密機器は、さらにジップロックで二重に守る

記録物や端末が濡れたら、それはもう「濡れた」ではすまない事故です。カバーを過信せず、中から守る。靴の記事でも書きましたが、雨の日の訪問看護は「やりすぎ」くらいでちょうどいいです。

訪問先でバッグはどこに置く?

基本は極力清潔なところに置かせていただく。そのうえで、現場ではこんな使い分けをしています。

  • 床の汚染が強いお宅では、ビニール袋・ごみ袋・新聞紙などを敷いてその上に置く
  • いっそごみ袋にバッグごと入れてしまうのもアリ
  • 感染性が高いケースでは、バッグを居室空間に持ち込まないという選択肢も検討します

バッグは訪問のたびに他人の生活空間に持ち込むもの。「自分の道具を守る」のと「お宅に持ち込まない・持ち帰らない」の両方の視点で扱います。

個人情報を運んでいるという緊張感

訪問看護のバッグには、物品だけでなく利用者さんの個人情報が入ります。ここは管理者として、はっきりルール化している部分です。

  • 外出先のコピー機は使用禁止(原本を置き忘れるリスクの塊です)
  • そもそも紙ベースの書類は極力持ち歩かない
  • 万一利用者さん宅に忘れたら、すぐ連絡して、最優先で取りに戻る
  • 重要書類だけを扱う色違いのファイル・フォルダーを決めておくのも有効です

新人さんへ:バッグの失敗と「神アイテム」2つ

新人がやりがちな失敗は、靴と同じで「新しい道具」に起因します。慣れていないバッグは、どこに何を入れたか分からなくなる。中身の”指定席”が体に入るまでは意識して使ってください。ちなみに、どんなバッグがいいかは面接や入職前の案内のときに聞いてしまってOKです。事業所側も聞かれて困る質問ではありません。

最後に、うちの現場の「入れとくと神」アイテムをふたつ。

  • 小さいラジオペンチ——三方活栓や点滴のジョイントが固着して外せない、というときに神になります。病院ならペアンで代用する場面ですが、在宅にペアンは転がっていません
  • シールタイプのちぎれるメジャー——褥瘡や創部の測定で、患者さんに貼り付けてそのまま写真が撮れる。片手がふさがっていても計測でき、ディスポで使えるので衛生的にも優秀です

まとめ:バッグも「専用品じゃなくていい」

  • 通販の「訪問看護バッグ」は現場でほぼ見ない。ガバッと開く・中が見える・形が崩れない・頑丈が条件。私の答えは工具用ツールバッグ、自転車ならリュック一択
  • 中身は「測定系・処置衛生系・記録系」+ビニール袋とジップロックを大量に
  • 雨は中から守る。個人情報は持ち歩かない・忘れたら最優先で戻る
  • ラジオペンチとシール式メジャーは神

靴の記事と合わせて読むと分かると思いますが、訪問看護の装備選びの本質は「専用品を買うこと」ではなく「現場で起きることから逆算すること」です。バッグも靴も、あなたの現場に合った相棒を選んでください。

あわせて読みたい

コメント

タイトルとURLをコピーしました